老若男女の溝を埋める TPOコミュニケーションのエキスパート
戸田久実さんインタビュー Vol.1

ー早速久実さんのお仕事の内容からお聞かせいただきたいです。

戸田久実(以下、戸田) 仕事は今、組織や企業の研究の講師業を主にしています。いろんな組織で人材開発のために組織開発のために様々な研修を開催すると思うのですが、主にコミュニケーション全般の研修を担当しています。

ーコミュニケーションというと、色々なスキルを目にしたり耳にしたりしますが、その中でもどのような研修内容になるのでしょうか?

戸田 いま私は一般社団法人日本アンガーマネジメント協会の理事も務めてますので、最近一番需要があるテーマはアンガーマネジメントなんです。
怒りという感情をどのように対処したらいいんだろうか、どう扱ったらいいんだろうか、怒りを感じたらどのように表現したらいいんだろうか。


例えばそれって、部下を指導するときもパワハラにならないように指導したらいいか、叱ったらいいかといったところにも活かせる内容なんですね。
あとはアサーティブコミュニケーションといって、相手も自分も大切にした自己信頼、相互信頼をもとにしたコミュニケーションの考え方と伝え方のスキルがあるのですが、その内容であったり。ときにはプレゼンテーションであったり、クレーム対応であったり様々なコミュニケーションのテーマを担当しています。

ー研修というと新入社員~リーダーシップ研修だったり、幹部の方だったり色々な対象者がいらっしゃると思うのですが、どの階層を得意とされているのですか?

戸田 最近多いのは、私も年齢がどんどん上がってきているのでリーダー層、マネージメント層への研修依頼が多いです。

リーダー層とマネジメント層の主な悩みは部下・後輩との接し方

ーリーダー層、マネージメント層のコミュニケーション上の悩みというのはどのようなことなんでしょうか?

戸田 いろんな職種があるのですが、やはり皆さん仰るのは、部下・後輩をもったときにどのように関わって指導したらいいんだろうかという内容です。
先程もお伝えしたように、注意しなきゃいけない、叱らなきゃいけないときにどのように叱ったらいいんだろうか。時にはモチベーションを高めてもらうためにはどのような関わり方をしたらいいか、ということ。

女性リーダーも昨今増えてきたので、女性が部下をもった時に、特に男性部下をもったときにどんなふうに関わっていったらいいか。
あと最近だんだん増えてきたのが、世代が違うと価値観が違いますよね?
価値観が違う若い人たちにどのようにコミュニケーションをとったらいいかとか、様々な悩みを聞くことがあります。


世代間の価値観の溝を埋めるのが、コミュニケーション

ー特に最近だと20代というと平成生まれじゃないですか。私達昭和の世代と比べるとコミュニケーションのとり方も価値観もかなり違うんじゃないかな、と思うのですが、上司の方々は世代別の価値観みたいなもので悩まれたりするんでしょうか?

戸田 そうですね。やはり世代が違うと私も、もちろんキョウコさんも昭和生まれですよね。私達の頃には「これって常識だよね?」「これって当たり前だよね?」「社会人になったらこれくらいのこと知っておくべきだよね?」という感覚ってもっていると思うんですよ。それがまったく通用しなくなってきたなというのは感じます。例えば私達が社会人になる頃って電話の取次って家庭教育の中である程度できているはず。だけど、固定電話に出たことないとか取次なんてしたことがないという世代も増えてきているので、そういった「これってさぁ、当たり前だよね?」ということがなかなか通用しなくなって、仕事は上司の背中を見て覚えろなんて死語に近いくらい。

「言ってくれなきゃ、教えてくれなきゃわからないよ」
「え、でもさぁ。言わなくてもわかるよね?」
「いや、だって言われてないから…」

もうそんな感じな状況です。

ーまったく話が噛み合わないというか…

戸田 そうですね。こっちが「これ当たり前だよね」「当然だよね」と思っても相手の当たり前、当然じゃないという認識がないと「え?なんでこんなことわからなかいかな?」「なんでここまで言わなきゃいけないかな?」とそういうふうな相手をやり込めるようなコミュニケーションになってしまうことって想像できるんですね。そうじゃなくて、私がいつも皆さんにお伝えしているのは私達が当たり前と思っていることは、相手の当たり前や普通や当然ではないはずなので、そこにあるギャップをどうやって埋めていったらいいんだろうか?


本来のコミュニケーションの目的って相手に自分の正しさを押し付けることではなくて、「こういうふうにわかってほしいんだ。こういうふうにしてほしいんだ。」ということを理解してもらったり、ときに相手に「なんでそう考えてるの?」「なんでそれが当たり前だと思ったの?」ということを引き出していかなきゃいけない。この溝を埋めていくのがコミュニケーションですよ。というのはよくお伝えしています。

ー素晴らしい。ほんとに久実さんがおっしゃっていることって王道というか誰もが知っておいて損はないコミュニケーションのスキルなんじゃないかなと今お話を聞いて思いました。

現場で本当に困っている時に活用してほしい

ーでは、次にコミュニケーション大百科についてお話を少し伺いたいです。こちらはいつ頃出版になった本でしょうか?

こちらの本は2019年の2月に発売しました。

ー半年前くらいですね。私もちょっと読ませていただいたんですけれども、色々なスキルが網羅されているというか、あとはこんなときにはこんな言葉がけをしましょうとか、ものすごく具体的な例が目次、索引にもなっていて困ったときにこそっと見て(笑)対応できるような感じの本だなと思いました。
これは作るにあたって意識したことはありますか?どんなシーンで使ってもらいたいとか。ただの読み物というよりは困ったときにちょっと見るみたいなものにも思えたんですよね。

戸田 まさに困ったときに、「あの時ってこの時ってどうすればいいんだろう?」「じゃあ、この本のを参考にしてみよう。」そんなふうに思ってもらえるように作ったんです。そのためにタイトルに大百科というキーワードを入れたんですね。そこに書いてある項目って、全て私が研修先・講演先に行ったときに相談された生の事例ばっかりなんです。いままで20数年間いろんな現場に行ってきて、いろんな相談を受けてきたわけです。


その時に「この時ってどう伝えたらいい?」とか「こういう時ってどんなふうに相手に切り替えしたらいい?」とかそういう相談を家に帰って整理してメモしておいたり、時にブログなどに忘れないようにまとめたりするんです。そこから全部引っ張り出して、そうだそうだ、現場で本当に困っている事例をシーンごとによくあるよね、というものをまとめてみようかな、と思いました。

「切り返す」という新しい対応方法

ー本当にわかりやすいと思いました。私自身がすごくおおー!と思ったところが第4章のところで「切り返す」。

戸田 よくコミュニケーションの本を読むと聞き方とか伝え方の本って結構多いですよね。

この切り返すっていう切り口なかなか無いなと思っていて、でもビジネスシーンにはこのスキルがすごく必要なんじゃないかと思って、聞いてるだけでも解決しないことももちろんあるし、自分の中での悶々としたものってあるじゃないですか。コミュニケーションをしていく上でのなんでわかってもらえないんだろうっていうことだったりとか、うまくコミュニケーションが取れなかったときの対処法だったりがこの切り返すってところに書いてあるのがすごく斬新だなっていう風に思いました。特に女性のねじれた嫉妬に切り返すとか(笑)

戸田 よく皆さん、マウンティングというところにかかって、いきなり怒鳴られるとか、「え?これって…」って嫌味とかマウンティングかな?と思うこと言われた時、「これって…どう切り返したらいいの…?」って悶々としている間にそのタイミングがずれてあとから結構ストレスためてる人も多いんですよね。

ーあの時黙って聞いていた自分に対するストレスと、逆に怒ってしまった、感情をむき出しにしてしまったことでのストレス。両極端でどちらもあると思うんですけど。ものすごく賢く対応できるようになる感じがして、ここすごくおすすめだなという風に思ったのと、「あ、そうか。コミュニケーションっていうのは対話だけでなくて、人の前で話すのもコミュニケーションだし、仕事の場面じゃなくても仕事以外でも場面での会話も大事だよね。」ということが入っていたりとか。まさしくビジネスマンだけじゃなくて誰もが読んでもらいたいような本だなと思いました。

戸田 実はそれを高校生新聞っていうウェブサイトもあって新聞ていう言葉の通り各学校に新聞として届けている編集部があるんですね。高校生にもこれって図がたくさんあっておすすめよねってことで高校生新聞の編集部の人が書店で見つけてインタビューしてくれたことがあるんです。時折、そういった高校生とか大学生で社会人になっていない方が手にとって感想を伝えてくれることがありますね。

ーそうですよね。確かに高校生でもいいですよね。またイラストが可愛いですよね。で、横文字なので高校生って横文字の参考書って読みますから勉強の息抜きにもなるし、社会勉強にもなるしっていう視点で見てもらうっていうのもいいかもしれないですね。多感なときにもコミュニケーションでみんな悩みますもんね。

戸田 そうですね。その高校生新聞のインタビューのときに高校生がどんな悩みをコミュニケーション上もっているかを聞くと、さほど社会人と変わらないです。例えば、学校の中で合唱祭とか文化祭とかクラスで一生懸命みんなで一つの目標に向かって取り組まなければ行けないイベント、行事ってあると思います。
その時にリーダー格になる人が、あんまり乗り気じゃない人をどう対処したりいいか悩んだり、なんか注意したらすぐ泣いちゃうからどうしたらいいのか、あまり前向きじゃない発言をする人に対してどう切り返したらいいのかとか、そんな悩みを持っているっていうのを聞いたんですね。


それって社会人、大人と大して変わりないじゃないと思ったわけです。

コミュニケーションってどの世代においてもどんな職種においても立場においても永遠の課題じゃないかなと思っているので多くの方に手にとってもらえればな、と思います。



多くの方が困る、”すぐに泣いてしまう人”への効果的な対応

ーちょっと具体的な事例を教えていただきたいのですが、いま登場しましたすぐに泣いてしまう人に対しては基本的にはどのように対応するのがいいんでしょうか?厳しいことを言われて泣いてしまう人に対しては久実さんだったらどのように対応されますか?

戸田 仕事の場面ですぐ泣いてしまうっていうと、大体想像できるのが自分にとって耳の痛い話、ショックを受ける話をされた時だと思うんですね。仕事の場面ですぐ泣いてしまうっていうと、大体想像できるのが自分にとって耳の痛い話、ショックを受ける話をされた時だと思うんです。


ただ、言うほうも耳の痛いことを相手に言うってものすごく覚悟とか勇気っていると思うんです。だから、泣いてしまうとそれ以上言えない。そして、この人に耳の痛いことはもう言えない。と思われてしまう。なので、相手には泣いてほしくはないんだけど泣かないでほしいとか、こんなことで泣くな、と言うとますます拗れると思う。

そういうこともあるので、一旦泣いてしまったら、泣き止むまで待つのでちょっとここで時間を置くねって言って待ってたり。それがワーワー泣かれちゃうと困るんですけど、少し収まったら「泣かれてしまうと本当にわかってほしいことも伝えづらくなっちゃうから、大事なことなのでここは泣かないで聞いてほしいんだ」ということは言います。

ー率直に言ったほうがいいということですかね。

戸田 そうですね。だから相手には「こういう場面で涙を流されてしまうと言うほうも戸惑ってしまう。でもこれは〇〇さんにとっても大事なことなのでここは泣かないで落ち着いて聞いてほしい。」ということは伝えます。

ーすごく今ジーンと来たのは、結構泣かれてしまうと伝えているほうも感情が揺れるじゃないですか。で、困ってしまってアワアワなっちゃったり、逆に怒ってしまう人もいると思うし、一緒に泣いちゃう人もいると思うし…

戸田 いますよね。あと突然慰めにいく人ね。別に責めてるわけじゃないから、とか言って全然話が違う方にいくんですよね。

ーで、そうではなくて、とにかく凛とした態度で望むというのは大切なんだろうな、というのを今感じました。結構私自身は慰めに入ってしまう派なので、その人の感情に流されて自分の感情も揺れるのではなくて、伝えるほうも覚悟を持って伝えるっていうことが大事なんだろうなというのを思いました。

戸田 あなたを責めてるわけではまったくなくてあなたのためにも、あとは一緒にチームを組んだり一緒の組織で働いてるんであれば、チームとか組織の今後のためにもとても大事なことを話すので、聞いほしいんだ。という要望は伝えたほうがいいのかな、と思います。

相手の感情はコントロールできない

ーありがとうございます。では、逆にですね。怒りっぽい上司。先ほどみたいに伝えなければいけないことを伝える場面ではなくて、こう、物に当たったり人に当たったりする上司。パワハラな上司っていうのもいると思うんですけれども。そういう上司が会社の上司だった場合に部下はどのような心持ちで過ごしたらいいでしょうか?

戸田 よく相談されるのが、うちの上司が怒りっぽくて、いま言ったように物に当たるとか怒鳴り散らすとかそういう人なんでなんとかしたいんです。という相談って多いんです。ただ、なんとかしたいって言っても、その怒ってる相手に怒らない上司になれって言ってもなんの解決もしないんですよね。かえって何言ってるんだって逆に怒られるかもしれないんですよ。

まず1つは「相手の感情はコントロールできない」。
相手の性格も感情もコントロールはできないですよ、ということは伝えます。できるのは、こちらの感情のコントロールなんですよ。感情的になっている相手にそれこそこちらが振り回されないようになるっていうことがまず1つ大事です。怒っている相手を変えようっていうことよりも、その人の怒りやネガティブな感情に振り回されないということです。自分になにか被害が及ぶとか直接的に関わりないような「なんかあの人いつもパソコンに向かってブツブツ怒ってるよね」とか、例えばいつも物に八つ当たりをしているよね程度だったら、あ、なんかまた今日イライラしてるよねーていうぐらいでやり過ごすっていうのも一つの手なんですよね。

あとは何か感情的に怒鳴られた時にやっちゃいけないのって売り言葉に買い言葉なんですよ。それこそ、なにかガーッと言われてこちらも感情的に言い返すと、とんでもないところに話の発展がいってしまうのでそれはやめましょうって言ってます。

そこは、アンガーマネジメントで感情的に衝動的な行動をしないようにコントロールしましょう。そして、その時にこの人が怒っている一番言いたいことってなんだろう?て、ここの大事なところだけを掴んでそれに対する対処をするのか。「この人から怒られている、何か叱られている意味はわかるんだけど、こんなところまで言われたくない。」例えば人格的に否定されるようなそういったことは言われたくないって思ったら、少しタイミングあけてでもいいです。ちょっと感情が収まった時に「先程…例えば、使えないやつだとか碌な仕事しないとか、そこまで言われてしまうと流石に一生懸命頑張っているのでそこまではショックな事なので、言わないでほしかったです」ということは言ってもいいですよ、とは言ってます。

ー逆にその言葉を言えるようになるっていうのはすごく成長なんじゃないかなと思うんですよね。先程から話を聞いてると性格は変えられないけれども、身につけたスキルで人間関係を活かせることっていくらでもできるんだな、という風に思っていて。感情的にならなくても済む方法を色々学ぶことで自分にバリアができるような、無駄に傷つくことがないように円滑に仕事ができるようになるスキルがこのコミュニケーションのスキルなんだなというのがすごく感じました。

身につけたコミュニケーションで解決できる!

戸田 いま仰るとおり、コミュニケーションの能力とかスキルって別に生まれ持ったものではないと思うんです。それこそ、私達が大人になるに従って言葉を覚えたようにどんどん色んな経験を積みながらコツを掴んで、あ、そうか。こういう時ってこうすればいいんだ。ってコツを掴んでまた次にトライして、徐々に自分のものにしたり、時には誰かからアドバイスを受けたり、できれば私の本なんかも参考にしていただきながら「そっかこういう時ってこうすればいいんだ。」ていうことを知って自分のものにすることができると思うんですね。


わたしがいつも言っているのは、相手やいろんな状況で変えられないことはたくさんあるけれども自分がなんらか変わっていく。例えば相手との関わり方とか言葉の選び方とか、それが変わると相手の受け止め方が変わったり時に相手の自分への出方が変わって、そこの関係が今と違ったものになる可能性はあるし、そしたらご自身の環境も変わっていく可能性もありますよね、ということは伝えています。

ーそういう風に思えてくると、コミュニケーションのスキルを学ぶだけで人生が切り開かれていくようなそんな夢が感じられるな、と思いました。ありがとうございました。

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